CONCEPT

“ Tradition Is
Continuing Innovation ”

「伝統は革新の連続」

"Hiyoshiya Contemporary"は京和傘の
老舗として五代160年以上に渡り
和傘を
作り続けてきた日吉屋がお届けする新しい
カタチの「WAGASA」です。
伝統技法と
デザインの力が融合したDesign Product、
それが"Hiyoshiya Contemporary
collection"です。

開発への思い

和傘の中では最もポピュラーで、数多く普及してきた傘に番傘
(ばんがさ)という傘があります。時には和傘全体を指して番傘と
呼ぶように、一般名称の用に使われる事もあります。
番傘の「番(ばん)」は、お番茶やおばんざい(京都弁で一般
の家庭料理)と同じ「番」で、その意味は「いつもの・普段
使いの」という事のようです。つまり番傘は「いつもの・
普段使いの」傘という意味だったのです。しかし、
現在の番傘は普段使いの傘というより、「伝統工芸品」と捉え
られる事の方が多く、何やら美術品か骨董品の用に
思われがちです。確かに美しい商品ではありますが、
博物館に飾る様な敷居の高い物で、一般人には無縁の物と
思われるのは、作り手として少し悲しくもあります・・・

意外な歴史

一方で和傘のルーツは、ほぼ千年程前に仏教や漢字と同じく
中国から伝来したと言われているのをご存知でしょうか?
意外なようですが、初期の和傘は「雨具」ではありませんでした。
神聖な存在を護る「魔除け」又は、僧侶や貴族等の身分の高い
人々の頭上に掲げて高貴な存在である事を示す「象徴・シンボル」
として使われていたのです。又、今の傘のように開閉する事が
できず、「開きっぱなし」の天蓋状の物だったそうです。
これでは持ち運びに不便ですね。しかしこの時代はお供の
者が主人に差し掛ける物であり、自分で持つことはなかった
ようですので、本人は困らなかったでしょうが・・・
傘が開閉できるようになったのは、諸説ありますが
安土桃山時代に「轆轤(ロクろ)」と呼ばれる仕組みが
もたらされて以降の事です。それ以外にも多くの名も無き和傘
職人達が日々努力し、より美しく、より便利な傘を作り
出そうと努めてきた結果、約千年の時を経て現在の和傘が徐々に
出来上がってきたのではないでしょうか。

伝統の意味とは

上記のように、和傘は千年以上の歴史を持ちながら、
その発生から現在まで全くカタチが変わることなく続いてきた
のではなく、実際はその時代に合わせて形状も、用途も多様に
変化して発展してきました。江戸時代には現在の製作方法が
完成し、分業制の発達や太平の世の中で、町民に装いや芸能を
楽しむ余裕も生まれ、「お洒落な」「格好良い」「便利な」
商品として和傘は大いに普及しました。しかし、戦後の
高度経済成長と生活様式の劇的な変化は和傘業界にも深刻
な影響を与え、過去数十年の間に洋傘が爆発的に普及する中で、
最盛期は年間1700万本も生産されていた和傘は
激減し、いつしか普段使いの「番傘」から、番傘という名の
「伝統工芸品」として扱われるようになり、現在では全国でも
僅かに十軒程が細々と作り続けているだけとなってしまいました。

和傘の今

戦後の変化が余りに急激であった事もあり、和傘業界は壊滅状態
に陥りました。和傘に限らず、伝統産業全体が斜陽産業の
代名詞のようになってしまっております。元々は日常的な
「普段使い」の商品として誰もが使っていた物が、「伝統工芸品」
としてしか扱われないのでは、存続は非常に困難です。
しかし、綿々と続いて来た職人の歴史を見ると、常に新しい事に
チャレンジし、その時代のお客様が求める魅力的な商品を
作ろうと努力し続けてきたのではないでしょうか?
いつのまにか「伝統工芸」と祭り上げられる中で、
お客様のニーズに合わせて変化する事を忘れてしまっては
いないだろうか?昔から続く伝統的なお祭りや寺社仏閣、
伝統行事、伝統芸能等に必要な工芸品も、もちろん必要です。
しかし、元々ほとんどが一般人の日常使いだった和傘は、着物を
中心とした生活様式が大きく転換し、グローバル化が進む現代の
ライフスタイルに合致しているのでしょうか?
いろいろと考え抜いた結果、残念ながら答えは「否」でした。

伝統は革新の連続

しかし、悲観していても仕方がありません。
「伝統は素晴らしいから日本国民は全て和傘を使いなさい」と
押し付けるのも間違っています。お客様が本当に欲しいと思う
商品、魅力的な商品を作る事が出来れば、自ずと道は開ける
のではないだろうか。代々の和傘職人が努力してきたように、
常に「お洒落な」「格好良い」「便利な」和傘を作り出せば
良いのではないだろうか?そもそも天蓋状の魔除けや
神祭具であった物が、時代に合わせて開閉可能でコンパクトに
持ち運べる雨傘や日傘、美しさを兼ねたお洒落小物として変化を
繰り返して発展してきたのであれば、今の時代に合うように、
用途も形状も変化して良いのではないだろうか?もっと言えば、
「革新」こそが「伝統」の真髄なのではないだろうか。

- 伝統は革新の連続 -

日々和傘製作を続ける中で自問するうちに、このような考えに至り、霧が晴れるようでした。
「伝統は革新の連続」・・・考えてみれば当たり前の事で、1000年前から全く姿を変えずに存続している物の方が
希少であり、ほとんどの商品や食品、文化、生活習慣に至るまで、その発生時から今日まで常に変化し続けて
いる物事の方が一般的なのです。では、今の時代に適した京和傘のカタチとは、どのような物なのか?
和傘職人にしか出来ない、伝統と歴史の中で培ってきた価値を今に活かせるカタチは何なのか?
定番の一品として多くのお客様に親しまれる、京和傘の日吉屋にしか出来ない新しい和傘のカタチ・・・

"Hiyoshiya Contemporary"は既成概念にとらわれず、今の時代のバンガサづくりを目指す私たちの志です。
いつの日か、その革新が次の伝統になる日を夢見て・・・私たちは挑戦を続けます。